基 本 理 念
創立の精神から出発する
百年前、先人たちは膨らみすぎて意思の疎通を欠いた会を離れ、道義的精神で結ばれた小さな会を選びました。
原 点
1923年、385名の選択
1923年(大正12年)5月8日、385名の弁護士が東京弁護士会を離れ、第一東京弁護士会を創立しました。「弁護士本来の面目を保持せん」として、あえて小さな会を新たに起こした──初代会長・原嘉道が『会記』に残した、私たちの会の原点です。
弁護士会は法律的団体なりと雖も道義的精神に拠り結合するにあらざれば久遠の安固進展を期すべからず
──『会記』
会の力の源泉は、規模でも、事業の多さでもありません。会員一人ひとりを結びつける道義的精神と、和衷協同の気風です。第一東京弁護士会が今も入会に際して「本会創立の精神を尊重する」旨の宣誓を求めているのは、その証です。
『会記』の全文は、読み物・第2部第5話「風はどこへ」に転記しています。
目 指 す 会 の 姿
核の太い、筋肉質な弁護士会
私たちが落とすのは贅肉です。増えすぎた委員会、量産される意見書、紙と会議で回る事務──会員の時間と会費を食い、意思決定を鈍らせているものです。太くするのは核です。資格審査と綱紀・懲戒、研修とOJT、市民の紛争解決インフラ、若手の業務基盤。筋肉質な弁護士会とは、やせ細った会ではなく、動ける会のことです。
創立から100年余を経た今、弁護士業務は、生成AIという、司法制度改革にも比すべき構造変化の入口に立っています。会員数は7,600名を超え、その半数近くを登録十数年までの若手が占めるに至りました。規模の拡大と事業の積み増しを続けてきた従来の弁護士会像のままでよいのか──私たちは、そうは考えません。私たちの目指す弁護士会像は、一言でいえば「核の太い、筋肉質な弁護士会」です。それは次の三つの基本姿勢から成ります。
基本姿勢 Ⅰ
会の業務を再編する ── 贅肉を落とす
この四半世紀、弁護士会は司法制度改革を追い風に役割を広げ続けてきました。公益活動の義務化、公設事務所、法テラス対応、研修の拡充、多数の委員会・本部・センター。その一つひとつの歴史的意義を否定はしません。しかし「何でもやる会」は、会費と会務負担の重さを通じて、かえって会員と会とを引き離しつつあります。会の業務は、会にしかできないことを核として再編すべきだと考えます。
基本姿勢 Ⅱ
弁護士自治は一歩も引かない
監督官庁を持たず、資格の審査も懲戒も自らの手で行う弁護士自治は、1949年の現行弁護士法で先人が勝ち取った金字塔であり、市民の権利を国家権力から守るための制度的基盤です。贅肉を落とすことは、自治を軽くすることでは断じてありません。自治の核心である資格審査・綱紀・懲戒にこそ、会の人的・財政的資源を集中すべきだと考えます。
基本姿勢 Ⅲ
浮かせた資源のすべてを、若手の業務基盤に注ぐ
会務の再編によって生まれる財源・人員・時間を、最重要課題である若手の業務基盤の確立に集中投下すべきだと考えます。AI時代の業務スキル、依頼者に出会う経路、先輩の知恵に触れる機会、そして負担の軽い会費。次の百年を担うのは、今の若手だからです。
三つの基本姿勢は、ばらばらの主張ではありません。贅肉を落とすから、自治に力を集められる。贅肉を落とすから、若手に投資できる。そして自治が堅固で若手が育つ会だけが、AIの時代を生き抜くことができます。これが私たちの考えを貫く一本の背骨です。
それは同時に、創立の精神への回帰でもあります。『会記』が説く「謙譲抑損」「和衷協同」──会の求心力は事業の多さではなく、会員相互の結合の質にあるという洞察は、会員の半数近くが若手となった今こそ、実践に移されるべきものです。